暑い日は室内で運動(市報のだ7月15日号掲載)
東京理科大学の准教授、柳田信也先生にお聞きしました。
梅雨明けが待ち遠しくなり、いよいよこれからが夏本番です。晴天の下、ワクワクするようなイベントも多くある季節になって参りますが、暑さと共にリスクが高まるのが熱中症です。前回は、熱中症の基本的な知識などについて掲載をしました。今月は、その続きで高齢者と熱中症についてお話をいたします。
熱中症の現状
前回のコラムに記載したように、熱中症は暑さに慣れていない6月ぐらいから急激に増えはじめ、リスクが高い状態となります。少しずつ暑さに慣れる“暑熱順化”が起こり、私たちは少々の熱さには負けないように強くなりますが、もちろん冬がやってくれば、この適応は失われます。これは四季がある日本に生きる私たちの宿命であると言えるかもしれません。本格的な暑さが迫ってくるこれからの季節はどのようなことに注意すれば良いでしょうか。
まず、何よりも注意すべきものはもちろん気温です。先月お伝えしたWBGTが有効な指標ですが、スポーツイベントを開催する主催者でもない限り、わざわざ調べようとはしないかもしれません。一方で、誰もが容易に目にする天気予報だけでも充分に熱中症の注意をするための判断材料になります。総務省は毎週、各都道府県の熱中症による救急搬送人員数を報告しています。
2019年7月8日から14日の速報値をみると、全国で797人(千葉県では17人)の人が救急搬送されております。前年の同時期ではどうだったかというと、2018年7月8日から14日では、なんと全国で7877人(千葉県では355人)もの人が搬送されています。(総務省ホームページより転載)
なぜ今年はこんなにも熱中症にかかる人が少ないのか?理由はさまざまかもしれませんが、最も明白な事実は気温が大きく異なるということです。
過去の気象データを調べてみると、ご覧のように2018年の気温が著しく高いことがわかります。もちろん、湿度や直射日光の有無は重要な要因ですが、まずは気温を確認することが熱中症を防ぐためには最も手軽な方法だとわかります。当たり前のことのようですが、この確認を怠らないことが大切です。
夏の運動
高齢者の方は、暑い日が続くと、運動する機会が減り、運動不足で体力が低下しやすくなると言われています。中高齢者の季節ごとの身体活動量を調べた研究によると、やはり夏の歩数が有意に減少し、身体活動量が著しく低下した状態になっていることがわかります(楠本ら,2003;大阪経大論集)。
なぜ夏になると身体活動量が低下するのか?明確な答えはわからないかもしれませんが、暑さによる身体的・心理的な疲労感や熱中症を危惧して外出を控えるということなどが考えられます。熱中症のリスクを考えれば、大切な判断のようにも感じられますが、ヒートアイランド化が加速度的に進む近年の我が国において、暑いから運動を控えるという行動を選択していると慢性的な運動不足になりかねません。私たちの筋肉は、使えば貯まりますが使わなければ萎縮します。高齢者おいては特にこの反応は顕著です。さらに、一般的に夏は冬よりも基礎代謝が低いと言われています(厚生労働省資料)。ただでさえ筋量の低下による基礎代謝の低下が問題となる高齢者においては、この夏場の基礎代謝の低下は重要な問題です。そこに身体活動による消費カロリーまでも低下させてしまうとなると、健康増進のためには大きなマイナスとなります。夏場において、熱中症に充分な配慮をしながら、身体活動不足にならないようにする対策は極めて重要となります。
気温と運動時の体温
日本人初のオリンピック選手、金栗四三がストックホルムオリンピック(1912年)において熱中症で倒れ、途中棄権となったことや同大会でポルトガル人・フランシスコ・ラザロがレース翌日に亡くなったことは有名な史実です。当然のことながら、高温・高湿の環境での運動は熱中症のリスクが高まります。
中井らの調査(によると、運動時の熱中症発症は、WBGT25度を超えると増えはじめ、28度を超えると急増することがわかっています。気温と湿度を充分にコントロールした環境で運動を実施しなければならないと言えるでしょう。エアコンの効いたトレーニングジムや公民館を活用すること、プールを利用することなどを考慮に入れ、熱中症のリスクを軽減した環境で運動を実施しましょう。特に、疫学研究の結果からは、高齢者は熱中症になりやすく、男性と女性では男性の方がなりやすいという結果が出ています。特に高齢の方は充分な注意が必要です。(注意;高齢者では女性の方においてリスクが高いという報告もあります)
室内と熱中症
熱中症は決して屋外だけでかかるわけではないということは、多くの方が認識しているのではないかと思います。いまだにエアコンは身体に良くないと考えている高齢の方は少なくないようで、室内で熱中症になってしまう人はかなりの数いるようです。
前述した総務省ホームページデータによると、同様の期間(7月8日から14日)に救急搬送された人のうち、およそ40パーセントの人は住居で熱中症を発症しています。
東京都の高齢者を対象に伊香賀らが行った調査(2011年)によると、室内の温熱環境に対して、加齢とともに変化がみられることがわかっています。体感温度をSET*という指標で評価した場合、年齢と共にその温度が有意に上昇していくことが明確に示されています。高齢者は暑さを感じにくいという特性があるようです。ここにエアコンに対する潜在的な意識が加わり、室内での熱中症のリスクを高めているものと推測されます。
温度環境のコントロールと水分補給を充分に行うように意識を変えていかなければならないと言えるでしょう。また、幼児の車内への置き去りなどはその典型ですが、独りでなければ重篤な症状になる前に対処ができる可能性が高くなります。市の活動などにも積極的に参加し、エアコンの効いた施設でふれあいを求めることを効果的な熱中症予防方法かもしれません。繰り返しになりますが、室温のコントロールと水分摂取をこまめに行いながら、アクティブに夏を乗り越えましょう。
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