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熱中症からからだを守ろう(市報のだ6月15日号掲載)

ページ番号 1023037 更新日  令和1年6月18日 印刷

柳田先生
(監修:柳田信也先生)

東京理科大学の准教授、柳田信也先生にお聞きしました。

これまで、このコラムでは健康で長生きするための運動の効果や重要性について、主に筋や骨の話を掲載してきました。今月からは、生活の中で役立つ健康や疾病に関する情報をお伝えしていこうと思います。今月のテーマは「熱中症」についてです。総務省の統計によると、猛暑続きであった昨年(平成30年)は、5月から9月の間に、実に95,137人もの人が熱中症で救急搬送されています。千葉県は4,206人であり、全国で7番目に多い数でした。特に注意が必要な地域の1つであると言えます。今年は、既に5月の連休頃から酷暑を経験しました。令和元年6月3日から6月9日までの速報値によると、全国の熱中症による救急搬送人員は、既に1,227人にも及ぶことが報告されています。毎週このデータは公表されていますが、5月以降加速度的に増えています。データからみても既に対策が必要であるとわかります。夏本番を前に熱中症に対する知識と理解を深め、充分な対策を立てることが大切です。

熱中症とは?

熱中症という言葉を聞いたことがない人は限られていると思いますが、熱中症についてきちんと定義することができる人は少ないかもしれません。熱中症とは、高温環境などにおいて、体内の水分や電解質(塩分など)のバランスが崩れることによって、体温をはじめとした体内の調節機構が破たんした状態によって、発症する障がいの“総称”です。あくまでも総称ですので、症状やその重篤さは1つではないという理解がまずは大切となります。日本救急医学会熱中症に関する委員会の分類によると、熱中症はその重症度で3つに分類されています。熱失神や熱痙攣(熱中症:I度)では、意識がもうろうとしたり、頭がボーっとしたりする一過性の意識消失や脚がつったりするなどの症状がみられます。これらの場合、基本的には涼しい場所で水分を摂取しながら経過観察をし、様子をみます。熱疲労と呼ばれる重症度II度の熱中症の場合、激しい頭痛や嘔吐がみられ、全身が動かなくなるような倦怠感に包まれます。自分で水分を摂取できる状態であれば摂取させ、身体を冷やし、できるだけ早く医療機関に向かわなければならない症状です。重症度の最も高い熱射病の場合、意識障がいや臓器の働きが鈍化するなど、生命の危機に曝されているという認識をもち、救急搬送も含め、できるだけ迅速な対応が求められます。

このように、熱中症は重症度によってまったく対処方法や危機感が異なるという認識を持つことが非常に重要です。この重症度の見極めが大切になるわけですが、その簡易的な方法は、“意識の確認”であると言えます。呼びかけに応じない、名前や住所が言えない、などの症状が見られた場合には、重症度が高い可能性がありますので、できるだけ早く救急隊員や医師の判断を仰ぐことができる状態にすることが大切です。重症度の違いは、脱水症状だけでとどまっているか、脱水症状に加えて神経機能に影響が及んでいるか、となります。神経機能に影響が及んでいる場合、軽度であれば脚がつったり、ボーっとしたりする症状が表れ、重度であれば意識障がいや臓器障がいが起こるという認識となります。私たちの身体は神経の指令を受けて意識的にも無意識的にも制御されていますので、神経の働きがストップしてしまうことは生命の危機を意味します。とにかく軽く考えずに迅速に医療機関の力を借りることが大切です。

新分類

従来分類

原因

症状/所見

I度

熱痙攣

heat cramp

大量発汗に伴う塩分喪失

筋肉の有痛性痙攣いわゆる「こむら返り」

熱失神

heat syncope

体表血流の増加に伴う血圧低下

一過性の意識喪失

II度

熱疲労

heat exhaustion

暑熱への暴露

水分、塩分喪失

頭痛、悪心、嘔吐、倦怠感など

深部体温40℃未満

III度

熱射症

heat stroke

暑熱への暴露

水分、塩分喪失

意識障がい

臓器障がい

身体の内部の温度

熱中症の指標として、体温があります。体温は、腋窩や口腔内で測るのが一般的かと思います。最近ではおでこや耳内に光を当てて測定するものもあります。実は、これらのいわゆる“体温計”では熱中症の状態を把握することは困難です。私たちの身体の体温は、皮膚と身体の内部(深部体温)では温度やその変化が異なります。身体の内部の温度は、さまざまな生体機能を維持するために、極めて精密にコントロールされています。私たちの深部体温は37.3℃前後であり、正常な場合はずれることがありません。脳の働きによって一定に保たれています。一方、皮膚の温度は発汗や直射日光などの熱によって大幅に変化します。変化しないことが重要な深部体温と、変わることが重要な皮膚温ということができるかもしれません。熱中症は、本来は厳密に維持されるはずの深部体温が高くなってしまう状態であり、この高い深部体温によってさまざまな生体機能の破綻をもたらす症状であるわけです。そのため、諸外国では熱中症が疑われる場合には、即座に直腸温の測定などが行われることも珍しくないようです。

ちなみにインフルエンザや風邪などによる高熱は、ウィルスを倒すために脳が深部体温の設定値を上昇させた状態です。脳が定めた設定値に体温を上げるために、身体機能が働いて自ら熱を産生して高体温になっています。設定値は通常の37.3℃のまま、高体温となってしまう熱中症とはこの点が異なります。

体温調節の重要性(発汗)

次に、変わることが重要な皮膚温についてお話しします。皮膚温は外部環境によって細かに素早く変化をしています。そのため、体温計はあまり外部の影響を受けない腋窩で測定をするようになっています。その変化の中で最も重要な影響を及ぼす因子は、発汗です。暑い環境にいる場合や運動を行った場合、汗が出てきます。この汗が、蒸発する際に皮膚の熱を奪い、私たちの身体の熱を外に逃がす働きをしています。ベタベタして不快な思いをすることも多い、夏場の発汗ですが、体温調節には非常に重要な生理反応です。

熱中症においても、この発汗の状態を見極めることが重要となります。熱中症の初期症状は「脱水」であり、その脱水を示すアラームに発汗はなりえます。発汗量は、多量すぎても少なすぎてもいけません。前述したように身体の熱を奪うのは、汗の蒸発ですので蒸発しきれないほどの大量の汗は、体温調節として意味を持ちません。これを無効発汗と呼びます。滝のような汗をかきながら、顔や皮膚が真っ赤になっているような状態は、脱水が始まっている可能性が高いと言えます。一方で、身体の熱が高まっている状態にもかかわらず、皮膚が乾燥してサラサラな状態の場合は、脱水が極度に進行しており、神経機能に障がいが出ている可能性が高く、極めて危険な状態です。発汗の状態をしっかりと確認することで、熱中症の重症度をある程度のレベルまで把握することができると言え、重要な確認ポイントです。

子どもや高齢者は発汗をはじめとした体温調節能力が低いと言われており、熱中症になりやすいと言えます。特に、高齢者は我慢強いことも多く、多少の違和感や不快感を我慢してしまうこともあるかと思います。まわりの人がしっかりと状態を観察してあげることが大切です。

脱水と水分摂取

熱中症の初期症状は脱水であると先ほど述べました。その予防を考える場合、まずは水分補給が浮かびます。熱中症予防や、熱中症が疑われる場合の水分補給について説明をします。私たちの身体は、ご存知かと思いますが真水で構成されておりません。細胞の外側はナトリウムなどの電解質を含んだ液体で囲まれています。原始的な生物が海の中で生活をしていたように、私たちの身体の中にある細胞周辺は、海の中にいるかのような環境が保たれています。脱水症状が起こる場合、身体の中から水だけが抜けていくわけではなく、さまざまな電解質も放出されてしまいます。そのため、ナトリウムやカリウムなどを含んだ飲料の摂取が必要となります。また、糖質が含まれることによって細胞内に水分が浸透しやすくなることもわかっているため、適度な量の糖質が含まれていることも水分摂取の効果を高めます。日本スポーツ協会の熱中症予防のためのガイドラインとしては、温度が5℃から10℃(冷蔵庫から出して少ししたぐらいの冷たさ)で、糖質を3%から6%、0.1%から0.2%程度の塩分を含んだ溶液がスポーツ活動における水分摂取として推奨されています。これらを満たすものは、市販のスポーツドリンクに他なりません。冷蔵庫で冷やしたスポーツドリンクを摂取することが最も簡単な予防方法であると言えます。熱中症の疑いがある場合や、予防を考える場合、摂取する水分は薄すぎても、濃すぎても問題があります。口がサッパリしないなどの理由でスポーツドリンクの摂取を敬遠し、お茶やミネラルウォーターなどの摂取を好む人もいますが、これらの電解質が含まれていない溶液を摂取すると、熱けいれんの原因となります。理由は、言うまでもなく、私たちの身体は真水で構成されていないからです。筋肉は真水の中ではうまく動くことができず、異常な収縮、けいれんを起こすことになります。一方で、高濃度(特に高糖質)の液体は、水分摂取効率が悪いばかりではなく、血糖値を下げるホルモン、インスリンの過剰な働きによって、血糖の急激な低下を生じる場合があります。充分に注意が必要です。

また、近年、熱中症対策としてさまざまなメーカーから経口補水液が発売されています。スポーツドリンクとの違いは、主に含まれているカリウムやナトリウムの量となります。スポーツドリンクは細胞の周りの液体、経口補水液は細胞の中の液体を模していると言えるかもしれません。熱中症が疑われ、脱水が極度に進んでいるような場合には経口補水液が効果的ですが、脱水の予防としては適切ではなく、スポーツドリンクの方が適していると言えます。この使い分けも大切です。

身体冷却方法

熱中症予防もしくは熱中症の疑いがある場合の対処として、水分補給と共に身体冷却があります。もちろんこれも多くの方はご存じであるとは思いますが、間違った方法を実践しているケースも少なくありません。熱中症が疑われる場合、首や鼠蹊部、腋窩などを氷や濡れタオルで冷やすという行動を実践する人が多いと思いますが、実はこれはあまり効果の無い対処法であると言われています。実験的な検討によると、これらの対処法では充分な体温低下効果が見られないことが報告されています。先ほど述べた通り、熱中症は身体の内部の温度が異常に高まっている状態なので、これらの部位を冷やす程度で症状を緩和できるレベルではないと言えるでしょう。アメリカやオーストラリアなど、世界的な標準としては氷の入った大きなバケツやバスタブに全身を浸す方法が推奨されています。とにかく一刻も早く深部体温を下げることが大切です。特に、意識障がいや神経機能の異常が見受けられる場合には一刻を争います。氷水ぐらいの冷たさがないと対処法にならないという認識を忘れないようにしましょう。

熱中症を事前に防ぐための予防法としても身体冷却が注目されています。特に暑熱環境で行われるスポーツ場面においては、多くの手法が検討され、実践されています。運動や作業をして体温の上昇が起こることで熱中症になるのであれば、行う前から体温を下げておけば良い!という考え方です。実際にスポーツ科学の研究結果によると、高温環境で運動を行う前に、水風呂に入って身体を冷やしておくと、運動中の体温上昇が抑制され、運動を安全に継続することのできる時間が延長するということがわかっています。水分摂取と同様に、暑熱環境で運動をする前には体温の上昇を抑える手法を事前に取り入れておくと効果的でしょう。

運動をする前に水風呂に入るという話を聞いて、筋肉が冷えてしまいパフォーマンスが低下するのでは?という疑問を持たれる方がいらっしゃると思います。確かに、運動前の身体冷却は筋肉の温度を低下させ、筋収縮能力に影響を及ぼす懸念があります。また、野球のピッチャーなど、手指の細かい動作が必要なスポーツ選手にとっては指先の感覚に影響するかもしれません。これらの問題を解消する方法として、近年、アイススラリーという飲料の摂取に注目が集まっています。アイススラリーとは、細かい氷と水の混合物で”飲める氷”と言えるかもしれません。細かい氷を直接飲むことで、食道や胃、腸などを内部から冷やす方法です。大きな氷は直接飲み込むことができませんし、細かい氷の方が単位面積当たりの表面積が大きくなるため、臓器と氷が接する面が増えます。この直接の接触による熱を奪う効果がアイススラリー摂取の身体冷却効果であると考えられています。このアイススラリーは家庭でも簡単に作成することが可能です。ミキサーで氷を細かく砕いて、冷水と3:1の割合で混ぜればアイススラリー状になります。スポーツドリンクで作成した氷を用いれば、より効果が高いと考えられます。アイススラリーは、身体冷却と水分摂取を同時に行うことができる方法として、熱中症予防の新たなツールとなっています。昨年、製薬会社から市販品も発売されています。

Fig2

暑熱順化

私たちの身体は、環境に適応する能力を持っています。これは暑さに対しても同様です。熱中症にかからないためには、暑さに慣れておくことも大切です。暑い日が続くと身体は徐々に適応して暑さに対する耐性が高まります。これを暑熱順化と呼びます。8月などの真夏はもちろん気温も湿度も高く、熱中症のリスクが高い状態ですが、最も気を付けなければいけない時期のひとつは、まさに今頃(6月)です。最近は5月ぐらいから既に猛暑の日もありますので、より早めないといけないかもしれません。充分な水分摂取を心がけながら、今の時期から少しずつ暑さに慣れる試みを始めておくと、来るべき真夏に熱中症になるリスクを軽減できます。また、日常的に運動を行い、体力の高い人はこの適応が早いと言われています。エアコンの効いた部屋に籠るだけではなく、身体を動かして体力の向上と共に暑熱順化を進めることが大切です。しかし、高齢者は体温調節機能が低下しているため、この順化反応が鈍くなっています。梅雨時期に熱中症になる高齢者が多いのもこの適応力の低下が原因ですので、充分な注意が必要です。

運動・作業と熱中症

暑熱環境で運動や作業をする場合には、当然のことながらより一層の注意が必要となります。日本救急医学会によると、熱中症は労作性熱中症と非労作性熱中症に分類されます。暑くなった室内で、高齢者などが熱中症になること(非労作性)も多くみられますが、スポーツ活動中や野外での活動中の熱中症も多く報告されています。

表1 労作性 vs. 非労作性
 

発生場所

典型的な患者背景

労作性

熱中症

屋外

若年男性のスポーツ

中壮年男性の労働

非労作性

熱中症

屋内

高齢者

独居

精神疾患や心疾患などの基礎疾患あり

屋外での活動を行う際に、確認をしていただきたいものとして、暑さ指数(WBGT;湿球黒球温度)があります。WBGTは熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。 単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なります。湿度や日射・輻射(ふくしゃ)、気温などの熱環境から人体が受ける熱収支を算出する指標です。このWBGTの値がある一定値を超えると急激に熱中症にかかる人が増えることがわかっています。

Fig4

最近では、比較的安価で手に入りますし、環境省の熱中症予防サイトでは随時、日本全国のWBGTを確認することができます。(http://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php)

熱中症は、単純に気温だけでリスクが高まるわけではありませんので、こまめにWBGTを確認するようにしましょう。

Fig5

特に、このWBGTの確認は運動やスポーツを行う場面では大切です。日常生活中の指針と合わせて、運動中の指針も確認をしておきましょう。

日常生活に関する指針

温度基準
(WBGT)

注意すべき
生活活動の目安

注意事項

危険
(31℃以上)

すべての生活活動でおこる危険性

高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。
外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。

厳重警戒
(28から31℃)

外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。

警戒
(25から28℃)

中等度以上の生活活動でおこる危険性

運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。

注意
(25℃未満)

強い生活活動でおこる危険性

一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。

  • (28から31℃)及び(25から28℃)については、それぞれ28℃以上31℃未満、25℃以上28℃未満を示します。
    日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.3」(2013)より
運動に関する指針

気温
(参考)

暑さ指数
(WBGT)

熱中症予防運動指針

35℃以上

31℃以上

運動は原則中止

特別の場合以外は運動を中止する。
特に子どもの場合には中止すべき。

31から35℃

28から31℃

厳重警戒
(激しい運動は中止)

熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。
10から20分おきに休憩をとり水分・塩分の補給を行う。
暑さに弱い人は運動を軽減または中止。

28から31℃

25から28℃

警戒
(積極的に休憩)

熱中症の危険が増すので、積極的に休憩をとり適宜、水分・塩分を補給する。
激しい運動では、30分おきくらいに休憩をとる。

24から28℃

21から25℃

注意
(積極的に水分補給)

熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。
熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。

24℃未満

21℃未満

ほぼ安全
(適宜水分補給)

通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。
市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。

  • 暑さに弱い人:体力の低い人、肥満の人や暑さに慣れていない人など
    公益財団法人日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019)より

熱中症は高齢者や子どもでは特に注意が必要です。しかし、誰でもかかるリスクを背負っています。対処を誤ると命の危険がある重大な問題であるという認識をもち、予防と対策に努めましょう。運動不足の人は、熱中症のリスクも高まります。また、誰かと一緒にいれば早期発見にもつながります。市が実施している「のだまめ学校」では、夏季限定講座として熱中症対策講座を実施しますので、ぜひ参加してみましょう。また、市の進めるシルバーリハビリ体操などに積極的に参加して、体力の向上とコミュニケーションを図りましょう。

のだまめ学校

熱中症対策をするのだ

日時

6月25日(火曜日)11時から正午まで

場所

保健センター4階408会議室

シルバーリハビリ体操

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